に化《け》したるかと、お雪は呆れ顔をして身内を見たが、にわかに色を染めて密《そッ》と少年を見ると、目を開かず。
 お雪は吻《ほっ》と息を吐《つ》いて、肌を納めようとした手を動かすに遑《いとま》なく、きゃッといって平伏した。声に応じて少年はかッぱと刎《は》ね起きて押被《おっかぶ》さり、身をもってお雪を庇《かば》う。娘の体は再び花の中に埋《うず》もれたが、やや有って顕《あらわ》れた少年の背《せな》には、凄《すさま》じい鈎形《かぎがた》に曲った喙《くちばし》が触れた。大鷲は虚を伺って、とこうの隙《すき》なく蒼空から襲い来《きた》ったのであった。
 倒れながら屹《きっ》とその面《おもて》を上げると、翼で群蝶を掻乱《かきみだ》して、白い烟《けぶり》の立つ中で、鷲は颯《さっ》と舞い上るのを、血走った目に瞶《みつ》めながら少年は衝《つ》と立った。思わず胸に縋るお雪の手を取って扶《たす》けながら、行方を睨《にら》むと、谷を隔てて遥《はるか》に見えるのは、杉ともいわず、栃《とち》ともいわず、檜《ひのき》ともいわず、二抱《ふたかかえ》三抱《みかかえ》に余る大喬木《だいきょうぼく》がすくすく天をさして枝を交
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