たら》して咽喉《のど》のあたりへ乗せたが、疲れてすやすやと睡《ねむ》った様子。顔のあたり、肩のあたり、はらはらと、来て、白く溜《たま》って、また入乱れて立つは、風に花片《はなびら》が散るのではない、前《さき》に大鷲がうつぎの森の静粛を破って以来、絶えず両人《ふたり》の身の辺《あたり》に飛交う、花の色と等しい、小さな、数知れぬ蝶々で。
 お雪は双の袂の真中《まんなか》を絞って持ち、留まれば美しい眉を顰《ひそ》める少年の顔の前を、絶えず払い退《の》け、払い退けする。その都度|死装束《しにしょうぞく》として身装《みなり》を繕ったろう、清い襦袢《じゅばん》の紅《くれない》の袂は、ちらちらと蝶の中に交って、間《ま》あれば、おのが肩を打ち、且つ胸のあたりを払っていたが、たちまち顔を顰《しか》めて唇を曲げた。二ツ三ツ体を捩《よ》ったが慌《あわただ》しい、我を忘れて肌を脱いだ、単衣《ひとえ》の背《せな》を溢《こぼ》れ出《い》づる、雪なす膚《はだえ》にも縺《もつ》るる紅《くれない》、その乳《ち》のあたりからも袂からも、むらむらとして飛んだのは、件《くだん》の白い蝶であった。
 我身|半《なかば》はその蝶
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