ところがみ》で疵《きず》を押えた、紅《くれない》はたちまちその幾枚かを通して染まったのである。
 お雪は見るも痛々しく、目も眩《く》れたる様《さま》して、おろおろ声で、
「痛みますか、痛みますか。」というのが判然《はっきり》聞える。
 眠れるか、少年はわずかにその頭《かしら》を掉《ふ》ったが、血は留《とま》らず、圧《おさ》えた懐紙は手にも耐《たま》らず染まったので、花の上に棄てた。一点紅、お雪は口を着けてその疵口《きずぐち》を吸ったのである。
 唇が触れた時、少年は清《すず》しい目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って屹《きっ》と見たが、また閉じて身動きもせず、手は忘れたもののようにお雪がするままに任せていた。
 両人が姿を見ると、我にもあらず、理学士が肉《ししむら》は動いたのである。

       五十四

 しばらくするとお雪は帯の端を折返して、いつも締めている桃色の下〆《したじめ》を解いて、一尺ばかり曳出《ひきだ》すと、手を掛けた衣《きぬ》は音がして裂けたのである。
 その切《きれ》で疵《きず》を巻いて、放すと、少年はほとんど無意識のごとく手を曲げて胸に齎《も
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