たそうで。あれそれと小田原をやってる処へ、また竜川とかいう千破矢の家の家老が貴方、参ったんだそうで、御主人の安否は拙者がか何かで、昔取った杵柄《きねづか》だ、腕に覚えがありますから、こりゃ強うがす、覚悟をして石滝へ入ろうとすると、どうでございましょう。四五間しかないそうですが、泥水を装《も》って川へ一時に推出して来た、見る間に杭《くい》を浸して、早や橋板の上へちょろちょろと瀬が着く騒《さわぎ》。大変だという内に、水足が来て足を嘗《な》めたっていうんです。それがために皆《みんな》が一雪崩《ひとなだれ》に、引返《ひっかえ》したっていいますが、もっとも何だそうで、その前《さき》から風が出て大降になりました様子でござりますな。」
「ああ、その事は昨日《きのう》知事の内から、道とかいう女中が来て私にいった。ちょいちょい見舞ってくれるんだ、今日もつい前《さき》に帰ったから聞いているよ。」
「それからはまるで三日、富山中は真暗《まっくら》で、止《や》むかと思うと滝のように降出します。いや神通が切れた、郷屋敷|田圃《たんぼ》の堤防《つつみ》が崩れた、牛の淵《ふち》から桜木町へ突懸《つッかか》る、四十物
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