の役か、いざといって船出をする時、船を動かすのは父上《おとっさん》の役、錨《いかり》を抜くのは慶造貴様の職だ。皆《みんな》に食事をさせるのはお兼じゃあないか。水先案内もあるだろう、医者もあろう、船の行《ゆ》く処は誰が知ってる、私だ、目が見えないでも勝手な処へ指揮《さしず》をしてやる、おい、星一ツない暗がりでも燈明台なんぞあてにするには及ばんから。」
 と説き得て、拓は片手を背後《うしろ》へついて、悠然として天井を仰いだ。
「難有《ありがと》[#ルビの「ありがと」は底本では「ありがた」]うござります。おお、小主公《わかだんな》。」と、慶造は思わず縁側に額をつけた。

       五十二

「いやもう久《ひさし》ぶりで癇癪《かんしゃく》をお起しなすって、こんな心持の可いことはござりません。私《わたくし》ゃ変な癖で、大旦那と貴方の癇癪声さえ聞きゃ、ぐっとその溜飲《りゅういん》の下りますんで。へい、それで私《わたくし》も安心でござります、ついお心持を丈夫にしようとッて前《さき》のように太平楽は並べましたものの、私《わたくし》も涙が出ます、実は耐《こら》えておりました。」
 慶造は情《なさけ》
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