てんかん》を起すくらい臆病《おくびょう》だからね。や、慌ててら、慌ててら、それに一張羅だ、堪《たま》ったもんじゃあねえ。躍ってやあがる、畜生、おもしれえ!」とばかりで雨を潜《くぐ》って、此奴《こいつ》人の気も知らず剽軽《ひょうきん》なり。
「道、滝さんが怪我をなさりやしないのか。」
「さようでございますね、」と、顔と顔。

       五十

「小主公《わかだんな》お久振でござりました、よく私《わたくし》の声にお覚えがござりますな。へい、貴方《あなた》がお目の悪いことも、そのために此家《ここ》の女《むすめ》が黒百合を取りに参りましたことも、早いもので、二日前のことだそうですが、もう市中で評判をいたしております。もっともことのついでに貴方のお噂がござりませんと、三年|越《ごし》お便《たより》は遊ばさず、どこに隠れてお在《いで》なさりますか、分りませんのでござりました。目がお見えなさらないというだけは不吉じゃあござりましたが、東京の方だというし、お年の比《ころ》なり御様子なり、てっきり貴方に違いないと、直ぐこちらへ飛んで参り、向うのあの荒物屋で聞いてお尋ね申しました。小主公《わかだんな》
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