あるし後で寄るよ。」
「はい、お忘物はこちらへ持って参りましても宜《よろ》しゅうございます。申兼ねますがどうぞいらっしゃって下さいまし、拝むんでございます、あの、後生になるのでございます。」
「可いじゃあないか、何も後《のち》にだってよ。」
義作が仔細《しさい》を心得て、
「競争をしてるんでさ、評判なんで。おい、姉さん、御主人様がこちらへお褥《しとね》が据《すわ》るから、あきらめねえ、仕方がねえやな。いえさ、気の毒だ、私《わっし》あ察するがね、まあ堪忍しなさい。」
「それでもどうぞ姫様にお願い遊ばして。」
「何をいうんですよ、馬鹿におしなさいねえ。」
と米は傍《かたわら》から押隔てると、敵手《あいて》はこれなり、倉は先《せん》を取られた上に、今のお懸けなさいましで赫《かッ》となっている処。
「止してくれ、人、身体《からだ》に手なんぞ懸けるのは、汚《けが》れますよ。」
「何を癩《かったい》が。」
「磔《はりつけ》め。」と角目立《つのめだ》ってあられもない、手先の突合《つつきあ》いが腕の掴合《つかみあ》いとなって、頬の引掻競《ひっかきくら》。やい、それと声を懸けるばかりで、車夫も、馬丁
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