、額を押え、
「や、天狗が礫《つぶて》を打ちゃあがる。」
 雨三粒降って、雲間に響く滝の音が乱れた。風一陣!

       四十八

「女中さん、降って来そうでございます、姫様《ひいさま》におっしゃって、まあ、お休みなさいましな」と米は程合《ほどあい》を見計らう。
「ああ、そういたしましょうねえ、お嬢様。」
 黙って敏活の気の溢《あふ》れた目に、大空を見ておわした姫様は、これに頷《うなず》いて御入《おんいり》があろうとする。道はもとより、馬丁《べっとう》義作続いて島野まで、長いものに巻かれた形で、一群《ひとむれ》になって。米は鍵屋あって以来の上客を得た上に、当の敵《あいて》の蔵屋の分二名まで取込んだ得意想うべく、わざと後を圧《おさ》えて、周章《あわ》てて胡乱々々《うろうろ》する蔵屋の女《むすめ》に、上下《うえした》四人をこれ見よがし。
「お懸けなさいまし、」と高らかに謂った。
 蔵屋の倉は堪《たま》りかねて、睨《ね》めながら米を摺抜《すりぬ》けて、島野に走り寄った。
「旦那様、若衆様《わかいしさん》とお二方は、どうぞ私《わたくし》どもへお帰りを願いとう存じます。」
「そうだ、忘れ物も
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