なもんだ。」
「やッ、」というて目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》る義作と一所に吃驚《びっくり》したのは、茶店の女で、向うの鍵屋の当の敵《かたき》、お米《よね》といって美しいのが、この折しも店先からはたはたと堤防《つつみ》へ駆出したことである。故こそあれ腕車が二台。

       四十六

「もしもしちょいとどうぞ、どうぞちょいとお待ち遊ばして。」と路を遮ったので、威勢の可《い》い腕車《くるま》が二台ともばったり[#「ばったり」は底本では「ばつたり」]停《とま》る。米は顔を赤らめて手を膝に下げて、
「恐入ります、御免下さいまし。どちらの姫様《ひいさま》ですか存じませんが、どうぞあちらへいらっしゃいましたら、私《わたくし》どもへお休み遊ばして下さいまし、後生でございます。」
 先に腕車《くるま》に乗ったのは、新しい紺飛白《こんがすり》に繻子《しゅす》の帯を締めて、銀杏返《いちょうがえし》に結った婦人《おんな》。
「何だね、お前さん。」
「はい、鍵屋と申します御休憩所《おやすみどころ》でございますが、よそと張合っておりますので。
 今朝から向《むこう》にばかりお客がご
前へ 次へ
全199ページ中148ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング