》のこった、私《わっし》ゃ手を合わせました。どうしてお前《め》さんなんざ学者で先生だっていうけれど、からそんな時にゃあ腰を抜かすね。へい。何だって法律で馬にゃあ乗れませんや、どうでげす。」
「はい、お茶を一ツ。」
大|気焔《きえん》の馬丁は見たばかりで手にも取らず、
「おう、そんなもなあ、まだるッこしい。今に私《わっし》ゃそこに湧《わ》いてるのに口をつけて干しちまうから打棄《うっちゃ》っておきねえ。はははは、ええ島野さん。おいらこれから石滝へ行《ゆ》くから、お前《めえ》あとから取りに来ねえ、夕立はちょいと借りるぜって、そのまま乗出したもんだからね、そこいら中騒いでた徒《てええ》に相済みませんを百万だら並べたんで。転んだ奴あ随分あったそうだけれど、大した怪我人もなし、持主が旦那様なんですから故障をいう奴もねえんで、そっちゃ安心をして追駈《おいか》けて来ましたが、何は若様はどちらへ行ったんで。」
「じゃあ、その何だろう、馬騒ぎで血逆上《ちのぼせ》がしたんだろう、本気じゃあないな。兵粮だって餡麺麭《あんパン》を捻込《ねじこ》んで、石滝の奥へ、今の前《さき》橋を渡ったんだ、ちょうど一足違い位
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