を飛越そうてえ可恐《おそろし》い逸《そ》れ方だ。南無三宝《なむさんぽう》、こりゃ加州まで行くことかと息切がして蒼《あお》くなりましたね。鳥居前のお前さん、乱暴じゃあがあせんか、華族様だってえのにどうです、もっともまああの方にゃあ不思議じゃねえようなものの、空樽《あきだる》の腰掛だね、こちとらだって夏向は恐れまさ、あのそら一膳飯屋から、横っちょに駆出したのが若様なんです。え、滝先生、滝公、滝坊、へん滝豪傑、こっちの大明神なんで。」とぐっと乗り、拳を握って力を入れると、島野は横を向いて、
「ふむ。」
「どうです、威勢が可いじゃがあせんか。突然《いきなり》畜生の前へ突立《つった》ったから、ほい、蹴飛ばされるまでもねえ、前足が揃って天窓《あたま》の上を向うへ越すだろうと思うと、ひたりと留《とま》ったでさ。畜生、貧乏|動《ゆるぎ》をしやあがる腮《あご》の下へ、体を入れて透間がねえようにくッついて立つが早いか、ぽんと乗りの、しゃんしゃんさ。素人にゃあ出来やせん。義作、貸しねえ貸しねえてって例の我儘《わがまま》だから断りもされず、不断面倒臭くって困ったこともありましたっけが、先刻《さっき》は真《ほん
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