います。」
「いえさ、連《つれ》は無かったのか。」

       四十三

「ただお一人でございましたよ、豪《えら》そうなお方なんです。それに仕込杖《しこみづえ》なんぞ持っていらっしゃいましたから、私達がかれこれ申上げた処で、とてもお肯入《ききい》れはなさりますまいと、そう思いまして黙って見ておりましたが、無事にお帰りなされば可《よ》うございますがね。」
 島野は冷然として、
「何、犬に食われて死にゃあ可いんだ。」
「だって、姉さんはお可哀そうじゃございませんか。」
「そりゃお互様よ。」
「あれ、お安くございませんのね。でも、あの、二度あることは三度とやら申しますから、今日の内また誰かお入りなさりはしまいかと言って、内の父様《おとっさん》も案じておりますから、貴方またその姉さんをお助けなさろうの何のッて、あすこへいらっしゃるのはお止し遊ばしまし。」
「だが、その滝の傍《そば》までは行っても差支《さしつかえ》が無いそうじゃないか。」
「そこまでなら偶《たま》に行く人もございますが、貴方何しろ真暗《まっくら》だそうですよ。もうそこへ参りました者でも、帰ると熱を煩って、七日も十日も寝る人が
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