突《つき》にかけてずッと押すと、心太《ところてん》の糸は白魚のごときその手に搦《から》んだ。皿に装《も》って、はいと来る。島野は口も着けず下に置いて、
「そうして何かい、ついぞまだそこへ行った者を見たことはないのか。」
「いいえ、私が生れましてから始めてでございますが、貴方どうでございましょう、つい少しばかり前にいらっしゃいました、太った乱暴な、書生さんが、何ですか、その姉さんがここへ参りましたことを御存じの様子で、どうだとお聞きなさいますから、それそれ申しますと、うむといったッきり駈出《かけだ》して、その方もまだお帰《かえり》になりません。」
「え、そりゃ何か、目の丸い、」
「はい、お色の黒い、いがぐり天窓《あたま》の。もうもう貴方のようじゃあございませんよ、おほほほ。」
「いや!」とばかりでこの紳士、何か早や、にたりとしたが、急に真面目になって、
「ちょッ、しようがないな。」
「貴方御存じの方なんですか。」
「うむ、何だよ、その娘の跡を跟《つ》けまわしてな、から厭《いや》がられ切ってる癖に、狂犬《やまいぬ》のような奴だ、来たかい! 弱ったな、どうも、汝《うぬ》一人で。」
「何でござ
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