ちゃあ。
 一番《ひとつ》何でもそういったものを、どしどし私たちが頂戴をすることにしようじゃないか。私ばかりでない、まだ同一《おんなじ》心の者が、方々に隠れている、その苧環《おだまき》の糸を引張ってさ、縁のあるものへ結びつけて、人間の手で網を張ろうという意《つもり》でね、こうやって方々歩いている。何、私なんざ、ほんの手先の小使だ、幾らも、お前さんの相談相手があるんだから、奮発をしてお前さん、連判状の筆頭につかないか。」
 意気八荒を呑む女賊は、その花のごとき唇から閃《ひらめ》いてのぼる毒炎を吐いた。洞穴《ほらあな》の中に、滝太郎が手なる燈《ともしび》の色はやや褪《あ》せたと見ると、件《くだん》の可恐《おそろし》い響《ひびき》は音絶《とだ》えるがごとく、どうーどうーどうーと次第に遠ざかって、はたと聞えなくなったようである。

       四十

「もう夜明だ、姉や、分ったい、うむ、早く出よう。そして、おいらもう、この穴へは入るまい。」
 滝太郎は決然として答えた。お兼は嬉しげに手を取って、
「滝さん、それでこそお前さんだ、ああ、富山じゃあ良《い》い事をした、お庇様《かげさま》で発程栄《
前へ 次へ
全199ページ中127ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング