直して、蒼白《あおじろ》い顔の片頬《かたほ》に笑《えみ》を湛《たた》えていたが、思わず声を放って、
「危いねえ!」
「そんなこたあ心得てら。やい、おいらが手にゃあ仏様持ってるぜ、手を懸けられるなら懸けてみろッて、大《おおき》な声で喚《わめ》きつけた。」
「うむ、うむ、」とばかりお兼は嬉しそうに頷《うなず》いて聞くのである。
「おいらが手で持ってさいその位騒ぐ奴等だ、それをお前こっちへ掴んでるからうっかり手出《てだし》ゃならねえやな。堂の中は人間の黒山が崩れるばかり、潮が湧《わ》いたようになってごッた返す中を、仏様を振廻しちゃあ後へ後へと退《さが》って、位牌堂《いはいどう》へ飛込んで、そこからお前壁の隅ン処を突き破って、墓原へ出て田圃《たんぼ》へ逃げたぜ。その替り取れようとも思わねえ大変なものをやッつけた。今でもお前、これを盗まれたとってどの位探してるか知れねえよ。富山の家《うち》が五六百焼けたってあんなじゃあるめえと思う位、可い心持じゃあねえか。姉や、それだがね、おらあこんなことを遣ってからはじめてだ、実は恐《こわ》かった、殺されるだろうと思ったよ。へん、おいらアのせいじゃないぜ、大丈
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