》に障ったから、おいらあな、」
 活気は少年の満面に溢《あふ》れて、蒼然《そうぜん》たる暗がりの可恐《おそろ》しい響《ひびき》の中に、灯はやや一条《ひとすじ》の光を放つ。

       三十七

「晩方で薄暗かったし、鼻と鼻と打《ぶ》つかっても誰だか分らねえような群衆だから難かしいこたあねえ。一番驚かしてやろうと思って、お前《めえ》、真直《まっすぐ》に出た。いきなり突立《つった》って、その仏像を帳《とばり》の中から引出したんだから乱暴なこたあ乱暴よ。媼《ばあ》やゆっくり拝みねえッて、掴《つか》みかかった坊主を一人|引捻《ひんねじ》って転《の》めらせたのに、片膝を着いて、差つけて見せてやった。どうして耐《たま》ったもんじゃあねえ。戦争の最中に支那《ちゃん》が小児《こども》を殺したってあんな騒《さわぎ》をしやあしまい。たちまち五六人血眼になって武者振つくと、仏敵だ、殺せと言って、固めている消防夫《しごとし》どもまで鳶口《とびぐち》を振って駈《か》け着けやがった。」
 光景の陰惨なのに気を打たれて、姿も悄然《しょうぜん》として淋しげに、心細く見えた女賊は、滝太郎が勇しい既往の物語にやや色を
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