でいった滝太郎の声も、四辺《あたり》の寂莫《せきばく》に包まれて、異様に聞える。
 そのまま腰を屈《かが》めて、横穴の中へ消えるよう。
 お兼は抱着くがごとくにして、山腹の土に手をかけながら、体を横たえ、顔を斜《ななめ》にして差覗《さしのぞ》いて猶予《ためら》った。
「滝さん、暗いじゃあないか。」
 途端に紫の光一点、※[#「火+發」、308−13]《ぱっ》と響いて、早附木《マッチ》を摺《す》った。洞《ほら》の中は広く、滝太郎はかえって寛《くつろ》いで立っている。ほとんどその半身を蔽《おお》うまで、堆《うずだか》い草の葉|活々《いきいき》として冷たそうに露を溢《こぼ》さぬ浅翠《あさみどり》の中に、萌葱《もえぎ》、紅《あか》、薄黄色、幻のような早咲の秋草が、色も鮮麗《あざやか》に映って、今踏込むべき黒々とした土の色も見えたのである。
「花室《はなむろ》かい、綺麗だね。」
「入口は花室だ、まだずっと奥があるよ。これからつき当って曲るんだ、待っといで、暗いからな。」
 燃え尽して赤い棒になった早附木《マッチ》を棄てて、お兼を草花の中に残して、滝太郎は暗中に放れて去る。
 お兼は気を鎮めて洞《
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