き》な鷲《わし》が居るの、それから何だって、山ン中だというに、おかしいじゃあねえか、水掻《みずかき》のある牛が居るの、種々《いろいろ》なことをいって、まだ昔から誰も入ったことがないそうで、どうして取って来られるもんだとも思やしないんだってこッた。弱虫ばかり、喧嘩の対手《あいて》にするほどのものも居ねえ処だから、そン中へ蹈込んで、骨のある妖物《ばけもの》にでも、たんかを切ってやろうと、おいら何《なん》するけれども、つい忙《せわし》いもんだから思ったばかし。」
「まあ、大層お前さん、むずかしいのね、忙いって何の事だい。」
「だから待ちねえ、見せるてこッた、うんと一番《ひとつ》喜ばせるものがあるんだぜ。」
「ああ、その滝さんが見せるというものは、何だか知らないが見たいものだよ。」

       三十四

 滝太郎はかつて勇美子に、微細なるモウセンゴケの不思議な作用を発見した視力を誉《たた》えられて、そのどこで採獲《とりえ》たかの土地を聞かれた時、言葉を濁して顔の色を変えたことを――前回に言った。
 いでそのモウセンゴケを渠《かれ》が採集したのは、湯の谷なる山の裾の日当《ひあたり》に、雨の後
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