とする。……高く買っていたら破談にするだ、ね。何しろ、ここは一ツ、私に立替えさしてお置きなさい。……そらそら、はじめたはじめた、お株が出たぜえ。こんな事に済まぬも義理もあったものかね、ええ、君。」
と太《ひど》く書生ぶって、
「だから、気が済まないなら、預け給え。僕に、ね、僕は構わん。構わないけれど、唯《ただ》立替えさして気が済まない、と言うんなら、その金子《かね》の出来るまで、僕が預かって置けば可《よ》うがしょう。さ、それで極《きま》った。……一ツ莞爾《にっこり》としてくれ給え。君、しかし何んだね、これにつけても、小児《こども》に学問なんぞさせねえが可《い》いじゃないかね。くだらない、もうこれ織公《おりこう》も十一、吹※[#「韋+鞴のつくり」、第3水準1−93−84]《ふいご》ばたばたは勤まるだ。二銭三銭の足《たし》にはなる。ソレ直ぐに鹿尾菜《ひじき》の代《だい》が浮いて出ようというものさ。……実の処《ところ》、僕が小指《レコ》の姉なんぞも、此家《ここ》へ一人|二度目妻《にどめの》を世話しようといってますがね、お互にこの職人が小児《こども》に本を買って遣《や》る苦労をするようじゃ、
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