も差俯向《さしうつむ》く。
 いや、行燈《あんどう》がまた薄暗くなって参ったようじゃが、恐らくこりゃ白痴《ばか》のせいじゃて。
 その時よ。
 座が白けて、しばらく言葉が途絶《とだ》えたうちに所在がないので、唄うたいの太夫《たゆう》、退屈《たいくつ》をしたとみえて、顔の前の行燈《あんどう》を吸い込むような大欠伸《おおあくび》をしたから。
 身動きをしてな、
(寝ようちゃあ、寝ようちゃあ、)とよたよた体を持扱《もちあつか》うわい。
(眠うなったのかい、もうお寝か。)といったが坐《すわ》り直ってふと気がついたように四辺《あたり》を※[#「目」+「句」 161−12]《みまわ》した。戸外《おもて》はあたかも真昼のよう、月の光は開《あ》け拡《ひろ》げた家《や》の内《うち》へはらはらとさして、紫陽花《あじさい》の色も鮮麗《あざやか》に蒼《あお》かった。
(貴僧《あなた》ももうお休みなさいますか。)
(はい、ご厄介《やっかい》にあいなりまする。)
(まあ、いま宿《やど》を寝かします、おゆっくりなさいましな。戸外《おもて》へは近うござんすが、夏は広い方が結句宜《けっくよ》うございましょう、私《わたし
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