ヤして、はらはらと落涙《らくるい》した。
 婦人《おんな》は目早く見つけたそうで、
(おや、貴僧《あなた》、どうかなさいましたか。)
 急にものもいわれなんだが漸々《ようよう》、
(はい、なあに、変ったことでもござりませぬ、私《わし》も嬢様のことは別にお尋《たず》ね申しませんから、貴女《あなた》も何にも問うては下さりますな。)
 と仔細《しさい》は語らずただ思い入ってそう言うたが、実は以前から様子でも知れる、金釵玉簪《きんさぎょくさん》をかざし、蝶衣《ちょうい》を纏《まと》うて、珠履《しゅり》を穿《うが》たば、正《まさ》に驪山《りさん》に入って、相抱《あいいだ》くべき豊肥妖艶《ほうひようえん》の人が、その男に対する取廻しの優しさ、隔《へだて》なさ、深切《しんせつ》さに、人事《ひとごと》ながら嬉《うれ》しくて、思わず涙が流れたのじゃ。
 すると人の腹の中を読みかねるような婦人《おんな》ではない、たちまち様子を悟《さと》ったかして、
(貴僧《あなた》はほんとうにお優しい。)といって、得《え》も謂《い》われぬ色を目に湛《たた》えて、じっと見た。私《わし》も首《こうべ》を低《た》れた、むこうで
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