。
その後から爪先上《つまさきあが》り、やがてまた太鼓《たいこ》の胴《どう》のような路の上へ体が乗った、それなりにまた下《くだ》りじゃ。
売薬は先へ下りたが立停《たちどま》ってしきりに四辺《あたり》を※[#「目」+「句」 101−3]《みまわ》している様子、執念《しゅうねん》深く何か巧《たく》んだかと、快からず続いたが、さてよく見ると仔細《しさい》があるわい。
路はここで二条《ふたすじ》になって、一条《いちじょう》はこれからすぐに坂になって上《のぼ》りも急なり、草も両方から生茂《おいしげ》ったのが、路傍《みちばた》のその角《かど》の処にある、それこそ四抱《よかかえ》、そうさな、五抱《いつかかえ》もあろうという一本の檜《ひのき》の、背後《うしろ》へ蜿《うね》って切出したような大巌《おおいわ》が二ツ三ツ四ツと並んで、上の方へ層《かさ》なってその背後へ通じているが、私《わし》が見当をつけて、心組《こころぐ》んだのはこっちではないので、やっぱり今まで歩いて来たその幅《はば》の広いなだらかな方が正《まさ》しく本道、あと二里足らず行けば山になって、それからが峠になるはず。
と見ると、どうし
前へ
次へ
全102ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング