たごや》の女のふとった膝《ひざ》へ脛《すね》を上げようという輩《やから》じゃ。
(これや、法界坊《ほうかいぼう》。)
なんて、天窓《あたま》から嘗《な》めていら。
(異《おつ》なことをいうようだが何かね、世の中の女が出来ねえと相場がきまって、すっぺら坊主になってやっぱり生命《いのち》は欲しいのかね、不思議じゃあねえか、争われねえもんだ、姉さん見ねえ、あれでまだ未練のある内がいいじゃあねえか、)といって顔を見合せて二人でからからと笑った。
年紀《とし》は若し、お前様《まえさん》、私《わし》は真赤《まっか》になった、手に汲んだ川の水を飲みかねて猶予《ためら》っているとね。
ポンと煙管《きせる》を払《はた》いて、
(何、遠慮《えんりょ》をしねえで浴びるほどやんなせえ、生命《いのち》が危くなりゃ、薬を遣《や》らあ、そのために私《わし》がついてるんだぜ、なあ姉さん。おい、それだっても無銭《ただ》じゃあいけねえよ、憚《はばか》りながら神方《しんぽう》万金丹、一|貼《じょう》三百だ、欲しくば買いな、まだ坊主に報捨《ほうしゃ》をするような罪は造らねえ、それともどうだお前いうことを肯《き》くか。)
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