《めし》に一折《ひとをり》の鮨《すし》を買《かつ》た。旅僧《たびそう》も私《わたし》と同《おなじ》く其《そ》の鮨《すし》を求《もと》めたのであるが、蓋《ふた》を開《あ》けると、ばら/\と海苔《のり》が懸《かゝ》つた、五目飯《ちらし》の下等《かとう》なので。
(やあ、人参《にんじん》と干瓢《かんぺう》ばかりだ、)と踈匆《そゝ》ツかしく絶叫《ぜつけう》した、私《わたし》の顔《かほ》を見《み》て旅僧《たびそう》は耐《こら》へ兼《か》ねたものと見《み》える、吃々《くつ/\》と笑《わら》ひ出《だ》した、固《もと》より二人《ふたり》ばかりなり、知己《ちかづき》にはそれから成《な》つたのだが、聞《き》けば之《これ》から越前《ゑちぜん》へ行《い》つて、派《は》は違《ちが》ふが永平寺《えいへいじ》に訪《たづ》ねるものがある、但《たゞ》し敦賀《つるが》に一泊《いつぱく》とのこと。
若狭《わかさ》へ帰省《きせい》する私《わたし》もおなじ処《ところ》で泊《とま》らねばならないのであるから、其処《そこ》で同行《どうかう》の約束《やくそく》が出来《でき》た。
渠《かれ》は高野山《かうやさん》に籍《せき》を置《
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