ばひ》だらけぢやあるまいか。
(もし、姉《ねえ》さん。)といつて茶店《ちやみせ》の女《をんな》に、
(此《この》水《みづ》はこりや井戸《ゐど》のでござりますか。)と、極《きま》りも悪《わる》し、もじ/\聞《き》くとの。
(いんね川《かは》のでございす。)といふ、はて面妖《めんえう》なと思《おも》つた。
(山《やま》したの方《はう》には大分《だいぶ》流行病《はやりやまひ》がございますが、此《この》水《みづ》は何《なに》から、辻《つぢ》の方《はう》から流《なが》れて来《く》るのではありませんか。)
(然《さ》うでねえ。)と女《をんな》は何気《なにげ》なく答《こた》へた、先《ま》づ嬉《うれ》しやと思《おも》ふと、お聞《き》きなさいよ。
此処《こゝ》に居《ゐ》て先刻《さツき》から休《や》すんでござつたのが、右《みぎ》の売薬《ばいやく》ぢや。此《こ》の又《また》万金丹《まんきんたん》の下廻《したまはり》と来《き》た日《ひ》には、御存《ごぞん》じの通《とほ》り、千筋《せんすぢ》の単衣《ひとへ》に小倉《こくら》の帯《おび》、当節《たうせつ》は時計《とけい》を挟《はさ》んで居《ゐ》ます、脚絆《きやは
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