ん》、股引《もゝひき》、之《これ》は勿論《もちろん》、草鞋《わらぢ》がけ、千草木綿《ちくさもめん》の風呂敷包《ふろしきづゝみ》の角《かど》ばつたのを首《くび》に結《ゆは》へて、桐油合羽《とういうがつぱ》を小《ちい》さく畳《たゝ》んで此奴《こいつ》を真田紐《さなだひも》で右《みぎ》の包《つゝみ》につけるか、小弁慶《こべんけい》の木綿《もめん》の蝙蝠傘《かうもりがさ》を一|本《ぽん》、お極《きまり》だね。一寸《ちよいと》見《み》ると、いやどれもこれも克明《こくめい》で、分別《ふんべつ》のありさうな顔《かほ》をして。これが泊《とまり》に着《つ》くと、大形《おほがた》の裕衣《ゆかた》に変《かは》つて、帯広解《おびひろげ》で焼酎《せうちう》をちびり/\遣《や》りながら、旅籠屋《はたごや》の女《をんな》のふとつた膝《ひざ》へ脛《すね》を上《あ》げやうといふ輩《やから》ぢや。
(これや、法界坊《はふかいばう》、)
 なんて、天窓《あたま》から嘗《な》めて居《ゐ》ら。
(異《おつ》なことをいふやうだが何《なに》かね世《よ》の中《なか》の女《をんな》が出来《でき》ねえと相場《さうば》が極《きま》つて、す
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