心持、目許《めもと》、ね、第一、髪が房々と真黒《まっくろ》に、生際《はえぎわ》が濃く……灯《あかり》の映る加減でしょう……どう見ても婦人《おんな》でしょう。婦人《おんな》も、産後か、病上《やみあが》りてった、あの、凄《すご》い蒼白《あおじろ》さは、どうです。
もう一人、)
と私の脇の下へ、頭を突込《つっこ》むようにして、附着《くッつ》いて、低く透かして、
(あれ、ね、床の間の柱に、仰向けに凭《もた》れた方は水島(劇評家)さんです。フト口を開《あ》きか何か、寝顔はという躾《たしなみ》で、額から顔へ、ぺらりと真白《まっしろ》は手巾《ハンケチ》を懸けなすった……目鼻も口も何にも無い、のっぺらぽう……え、百物語に魔が魅《さ》すって聞いたが、こんな事を言うんですぜ。)
ところが、そんなので無いのが、いつか魅《さ》し掛けているので気になる……」
二十二
「そうすると、趣向をしたのはこの人では無いらしい、企謀《もくろ》んだものなら一番懸けに、婆々《ばばあ》を見着けそうなものだから。
(ねえ、こっちにもう一つ異体《いてい》なのは、注連《しめ》でも張りそうな裸のお腹、……)
(何
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