上げるような杉の大木の茂った中から、スーと音がして、ばったり足許へ落ちて来たものがあるの。常燈明の細い灯《あかり》で、ちょいと見ると、鳥なんですって、死んだのだわねえ、もう水を浴びたように悚然《ぞっ》として、何の鳥だかよくも見なかったけれど、謎々よ、……解くと、弟は助からないって事になる……その時は落胆《がっかり》して、苔《こけ》の生えた石燈籠《いしどうろう》につかまって、しばらく泣きましたって、姉さんがね、……それでも、一念が届いて弟が助かったんですから……思い置く事はありません、――とさ。
ああ、きっとそれじゃ、……その時治らない弟さんの身代りに、自分がお約束をしたんだろう。それだから、ああやって覚悟をして死んで行《ゆ》くのを待っておいでだ。事によったら、月日なんかも、その時|極《き》めて頼んだのかも分らない、可哀相だ、つて才ちゃんも泣いていました。
そしてね、今度の世は、妹に生れて来て甘えよう、私は甘えるものが無い。弟は可羨《うらやま》しい、あんな大きななりをして、私に甘ったれますもの。でも、それが可愛くって殺されない。前《さき》へ死ぬ方がまだ増《まし》だ、あの子は男だから堪
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