んな》姉さんがして、それでも楽《たのし》みにしているんでしょう。
 そうした処が、この二三年、その弟さんが、大変に弱くなったの。困るわねえ。――試験が済めばもう卒業するのに、一昨年《おととし》も去年もそうなのよ、今年もやっぱり。続いて三年病気をしたの。それもあの、随分大煩いですわ、いつでも、どっと寝るんでしょう。
 去年の時はもう危ないって、電報が来たもんですから、姉さんが無理をして京都へ行ったわ。
 二年続けて、彼地《あっち》で煩らったもんですから、今年の春休みには、是非お帰んなさいって、姉さんも云ってあげるし、自分でも京都の寒さが不可《いけな》いんだって、久しぶりで帰ったんです。
 水菓子屋の奥に居たもんですから、内へも来たわ。若旦那《わかだんな》って才ちゃんが言うのよ。お父《とっ》さんはね、お侍が浪人をしたのですって、――石橋際に居て、寺子屋をして、御新造《ごしん》さんの方は、裁縫《おしごと》を教えたんですっさ、才ちゃんなんかの若い時分、お弟子よ。
 あとで、私立の小学校になって、内の梅次さんも、子供の内は上ってたんですさ。お母《っか》さんの方は、私だって知ってるわ。品の可《い》
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