っぱりぞっとするから閉めて行《ゆ》く、帰りがけにはちゃんと開けてあった。それを見た人は色々で、細目の時もあり、七八分目の時もあり、開放しの時もあった、と言う。
さて、そのときまでは、言ったごとく、陽気立って、何が出ても、ものが身に染むとまでには至らなかったが、物語の猫が物干の声になってから、各自《おのおの》言合わせたように、膝が固まった。
時々灰吹の音も、一ツ鉦《がね》のようにカーンと鳴って、寂然《しん》と耳に着く。……
気合が更《あらた》まると、畳もかっと広くなって、向合《むかいあ》い、隣同士、ばらばらと開けて、間《あわい》が隔るように思われるので、なおひしひしと額を寄せる。
「消そうか、」
「大人気ないが面白い。」
ここで電燈《でんき》が消えたのである。――
「案外身に染みて参りました。人数の多過ぎなせいもありましょう。わざと灯《あかり》を消したり、行燈《あんどう》に変えたりしますと、どうもちと趣向めいて、バッタリ機巧《からくり》を遣《や》るようで一向潮が乗りません。
前《せん》の向島の大連の時で、その経験がありますから、今夜は一番《ひとつ》、明《あかり》晃々《こうこう》
前へ
次へ
全97ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング