ませんか、お供をして、そこいら、御案内をしましょう、と手前にそう言っていましたっけ。」と団扇《うちわ》を構えて雑貨店主。
「そう、まあ……見て来ましょうか。」
「ねえ。」と顔を見合わせた。
子爵が頭《かぶり》を振りながら、
「お止《よ》しなさい、お揃いじゃ、女郎《じょろ》が口惜《くや》しがるでしょう、罪だ。」
六
「なぜですか。」
「新橋、柳橋と見えるでしょう。」
「あら、可厭《いや》だ。」
「四つ、」
と今度は、魯智深が、透かさず指を立てて、ずいと揚げた。
すべてがこの調子で、間へ二ツ三ツずつ各自《めいめい》の怪談が挟まる中へ、木皿に割箸《わりばし》をざっくり揃えて、夜通しのその用意が、こうした連中に幕の内でもあるまい、と階下《した》で気を着けたか茶飯の結びに、はんぺんと菜のひたし。……ある大籬《おおまがき》の寮が根岸にある、その畠に造ったのを掘たてだというはしりの新芋。これだけはお才が自慢で、すじ、蒟蒻《こんにゃく》などと煮込みのおでんを丼《どんぶり》へ。目立たないように一銚子《ひとちょうし》附いて出ると、見ただけでも一口|呑《の》めそう……梅次の幕を正面へ
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