々《ひそひそ》と話をするのが、寂《しん》とした人通《ひとどおり》の無い、樹林《きばやし》の中じゃ、その筈《はず》でしょう。
お引受け申して、こりや思懸けない、と相応に苦労をしました揚句《あげく》、まず……昔の懺悔《ざんげ》をしますような取詰め方で、ここを頼んだのでございます。
言訳を申すじゃありませんが、以前だとて、さして馴染《なじみ》も無い家《うち》が、快く承わってくれまして、どうやらお間に合わせます事が出来ました。
ちと唐突《だしぬけ》に変った誂《あつら》えだもんですから、話の会だと言いますと、
(はあ、おはなの……)なんてな、此家《ここ》の姉御《あねご》が早合点《はやがってん》で……」
と笑いながら幹事が最初|挨拶《あいさつ》した、――それは、神田辺の沢岡という、雑貨店の好事《ものずき》な主人であった。
四
連中には新聞記者も交《まじ》ったり、文学者、美術家、彫刻家、音楽家、――またそうした商人《あきんど》もあり、久しく美学を研究して、近頃欧洲から帰朝した、子爵《ししゃく》が一人。女性《にょしょう》というのも、世に聞えて、……家《うち》のお三輪は、婦人
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