[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
けげんな顔して引込むと、また窺いいたる、おその、と一所に笑い出して、二人ばたばたと行って襖際へ……声をきき知る表情にて、衝《つ》と出づる欣弥を見るや、どぎまぎして勝手へ引込む。
村越。つつと出で、そこに、横を向いて立ったる白糸を一目見て、思わず手を取る。不意にハッと驚くを、そのまま引立《ひった》つるがごとくにして座敷に来り、手を離し、※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》とすわり、一あしよろめいて柱に凭《よ》る白糸と顔を見合せ、思わずともに、はらはらと泣く。撫子、襖際に出で、ばったり通盆を落し、はっと座ると一所に、白糸もトンと座につき、三人ひとしく会釈す。
欣弥、不器用に慌《あわただ》しく座蒲団《ざぶとん》を直して、下座《しもざ》に来り、無理に白糸を上座《じょうざ》に直し、膝を正し、きちんと手をつく。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
欣弥 一別以来、三年、一千有余日、欣弥、身体、髪膚《はっぷ》、食あり生命あるも、一《いつ》にもって、貴女の御恩……
白糸 (耳にも入《い》らず、撫子を
前へ
次へ
全23ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング