。
当時《むかし》盲縞《めくらじま》の腹掛けは今日黒の三つ紋の羽織となりぬ。金沢裁判所新任検事代理村越欣弥氏は、実に三年前の馭者台上の金公なり。
七
公判は予定の日において金沢地方裁判所に開かれたり。傍聴席は人の山を成して、被告および関係者水島友は弁護士、押丁《おうてい》らとともに差し控えて、判官の着席を待てり。ほどなく正面の戸をさっと排《ひら》きて、躯高《たけたか》き裁判長は入り来たりぬ。二名の陪席判事と一名の書記とはこれに続けり。
満廷粛として水を打ちたるごとくなれば、その靴音《くつおと》は四壁に響き、天井に※[#「應」の「心」に代えて「言」、70−17]《こた》えて、一種の恐ろしき音を生《な》して、傍聴人の胸に轟《とどろ》きぬ。
威儀おごそかに渠《かれ》らの着席せるとき、正面の戸は再び啓《ひら》きて、高爽《こうそう》の気を帯び、明秀の容《かたち》を具《そな》えたる法官は顕《あら》われたり。渠はその麗しき髭《ひげ》を捻《ひね》りつつ、従容《しょうよう》として検事の席に着きたり。
謹慎なる聴衆を容《い》れたる法廷は、室内の空気|些《さ》も熱せずして、渠らは
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