義血侠血
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)高岡《たかおか》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)越中|高岡《たかおか》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「月+因」、6−15]脂《べに》
−−

       一

 越中|高岡《たかおか》より倶利伽羅下《くりからじた》の建場《たてば》なる石動《いするぎ》まで、四里八町が間を定時発の乗り合い馬車あり。
 賃銭の廉《やす》きがゆえに、旅客はおおかた人力車を捨ててこれに便《たよ》りぬ。車夫はその不景気を馬車会社に怨《うら》みて、人と馬との軋轢《あつれき》ようやくはなはだしきも、わずかに顔役の調和によりて、営業上|相干《あいおか》さざるを装えども、折に触れては紛乱を生ずることしばしばなりき。
 七月八日の朝、一番発の馬車は乗り合いを揃《そろ》えんとて、奴《やっこ》はその門前に鈴を打ち振りつつ、
「馬車はいかがです。むちゃに廉くって、腕車《くるま》よりお疾《はよ》うござい。さあお
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