へん)+見」、第4水準2−88−41]《うかが》いつつ、
「じゃ言いましょうか」
「うん、承ろう」と男はやや容《かたち》を正せり。
「ちっと羞《は》ずかしいことさ」
「なんなりとも」
「諾《き》いてくださるか。いずれおまえさんの身に適《かな》ったことじゃあるけれども」
「一応|聴《き》いた上でなければ、返事はできんけれど、身に適ったことなら、ずいぶん諾くさ」
白糸は鬢《びん》の乱《おく》れを掻《か》き上げて、いくぶんの赧羞《はずか》しさを紛らわさんとせり。馭者は月に向かえる美人の姿の輝くばかりなるを打ち瞶《まも》りつつ、固唾《かたず》を嚥《の》みてその語るを待てり。白糸は始めに口籠《くちご》もりたりしが、直ちに心を定めたる気色《けしき》にて、
「処女《きむすめ》のように羞《は》ずかしがることもない、いい婆《ばばあ》のくせにさ。私の所望《のぞみ》というのはね、おまえさんにかわいがってもらいたいの」
「ええ!」と馭者は鋭く叫びぬ。
「あれ、そんなこわい顔をしなくったっていいじゃありませんか。何も内君《おかみさん》にしてくれと言うんじゃなし。ただ他人らしくなく、生涯《しょうがい》親類のよう
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