あ、骨まで冷抜《ひえぬ》いてしまうからよ、私《わし》が褞袍《どんつく》を枕許《まくらもと》に置いてある、誰も居ねえから起きるならそこで引被《ひっか》けねえ。」
といったが克明な色|面《おもて》に顕《あらわ》れ、
「おお、そして何よ、憂慮《きづかい》をさっしゃるな、どうもしねえ、何ともねえ、俺《おら》あ頸子《くびったま》にも手を触りやしねえ、胸を見な、不動様のお守札が乗っけてあら、そらの、ほうら、」
菊枝は嬉しそうに血の気のない顔に淋しい笑《えみ》を含んだ。
「むむ、」と頷《うなず》いたがうしろ向《むき》になって、七兵衛は口を尖《とん》がらかして、鍋《なべ》の底を下から見る。
屏風《びょうぶ》の上へ、肩のあたりが露《あらわ》れると、潮たれ髪はなお乾かず、動くに連れて柔かにがっくりと傾くのを、軽く振って、根を圧《おさ》えて、
「これを着ましょうかねえ。」
「洗濯をしたばかりだ、船虫は居ねえからよ。」
緋鹿子《ひがのこ》の上へ着たのを見て、
「待《また》っせえ、あいにく襷《たすき》がねえ、私《わし》がこの一張羅の三尺じゃあ間に合うめえ! と、可《よ》かろう、合したものの上へ〆《し》め
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