葛飾砂子
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)橘之助《きつのすけ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)先年|尾上《おのえ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+句」、第4水準2−81−91]
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縁日  柳行李  橋ぞろえ  題目船  衣の雫  浅緑

記念ながら
[#ここで字下げ終わり]
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     縁日

       一

 先年|尾上《おのえ》家の養子で橘之助《きつのすけ》といった名題|俳優《やくしゃ》が、年紀《とし》二十有五に満たず、肺を煩い、余り胸が痛いから白菊の露が飲みたいという意味の辞世の句を残して儚《はかの》うなり、贔屓《ひいき》の人々は謂《い》うまでもなく、見巧者《みごうしゃ》をはじめ、芸人の仲間にも、あわれ梨園の眺め唯一の、白百合一つ萎《しぼ》んだりと、声を上げて惜しみ悼まれたほどのことである。
 深川富岡門前に待乳《まっち》屋と謂って三味線《さみせん》
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