おほげさ》に立到《たちいた》る。
其奴《そいつ》引捕《ひつとら》へて呉《く》れようと、海陸軍《かいりくぐん》を志願《しぐわん》で、クライブ傳《でん》、三角術《さんかくじゆつ》などを講《かう》じて居《ゐ》る連中《れんぢう》が、鐵骨《てつこつ》の扇《あふぎ》、短刀《たんたう》などを持參《ぢさん》で夜更《よふけ》まで詰懸《つめかけ》る、近所《きんじよ》の仕出屋《しだしや》から自辨《じべん》で兵糧《ひやうらう》を取寄《とりよ》せる、百目蝋燭《ひやくめらふそく》を買入《かひい》れるといふ騷動《さうどう》。
四五日《しごにち》經《た》つた、が豪傑連《がうけつれん》何《なん》の仕出《しだ》したこともなく、無事《ぶじ》にあそんで靜《しづ》まつて了《しま》つた。
扨《さて》其黄昏《そのたそがれ》は、少《すこ》し風《かぜ》の心持《こゝろもち》、私《わたし》は熱《ねつ》が出《で》て惡寒《さむけ》がしたから掻卷《かいまき》にくるまつて、轉寢《うたゝね》の内《うち》も心《こゝろ》が置《お》かれる小説《せうせつ》の搜索《さうさく》をされまいため、貸本《かしほん》を藏《かく》してある件《くだん》の押入《おしい
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