間前《いつしうかんまへ》の夜《よ》、夜學《やがく》は無《な》かつた頃《ころ》で、晝間《ひるま》の通學生《つうがくせい》は歸《かへ》つて了《しま》ひ、夕飯《ふゆはん》が濟《す》んで、私《わたし》の部屋《へや》の卓子《つくゑ》の上《うへ》で、燈下《とうか》に美少年録《びせうねんろく》を讀《よ》んで居《ゐ》た。
一體《いつたい》塾《じゆく》では小説《せうせつ》が嚴禁《げんきん》なので、うつかり教師《けうし》に見着《みつ》かると大目玉《おほめだま》を喰《く》ふのみならず、此《この》以前《いぜん》も三馬《さんば》の浮世風呂《うきよぶろ》を一册《いつさつ》沒收《ぼつしう》されて四週間《ししうかん》置放《おきつぱな》しにされたため、貸本屋《かしほんや》から嚴談《げんだん》に逢《あ》つて、大金《たいきん》を取《と》られ、目《め》を白《しろ》くしたことがある。
其夜《そのよ》は教師《けうし》も用達《ようたし》に出掛《でか》けて留守《るす》であつたから、良《やゝ》落着《おちつ》いて讀《よ》みはじめた。やがて、
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二足《にそく》つかみの供振《ともぶり》を、見返《みかへ》るお夏《なつ
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