も思《おも》はなかつた。白《しろ》い乳《ちゝ》を出《だ》して居《ゐ》るのは胸《むね》の處《ところ》ばかり、背向《うしろむき》のは帶《おび》の結目許《ゆひめばか》り、疊《たゝみ》に手《て》をついて居《ゐ》るのもあつたし、立膝《たてひざ》をして居《ゐ》るのもあつたと思《おも》ふのと見《み》るのと瞬《またゝ》くうち、ずらりと居並《ゐなら》んだのが一齊《いつせい》に私《わたし》を見《み》た、と胸《むね》に應《こた》へた、爾時《そのとき》、物凄《ものすご》い聲音《こわね》を揃《そろ》へて、わあといつた、わあといつて笑《わら》ひつけた何《なん》とも頼《たのみ》ない、譬《たと》へやうのない聲《こゑ》が、天窓《あたま》から私《わたし》を引抱《ひつかゝ》へたやうに思《おも》つた。トタンに、背後《うしろ》から私《わたし》の身體《からだ》を横切《よこぎ》つたのは例《れい》のもので、其女《そのをんな》の脚《あし》が前《まへ》へ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《まは》つて、眼《め》さきに見《み》えた。※[#「口+阿」、第4水準2−4−5]呀《あなや》といふ間《ま》に内《うち》へ引摺込《ひきずりこ》まれ
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