》で突切《つツき》つたが、暗《くら》がりで三尺《さんじやく》の壁《かべ》の處《ところ》へ突當《つきあた》つて行處《ゆきどころ》はない、此處《こゝ》で恐《おそろ》しいものに捕《とら》へられるのかと思《おも》つて、あはれ神《かみ》にも佛《ほとけ》にも聞《きこ》えよと、其壁《そのかべ》を押破《おしやぶ》らうとして拳《こぶし》で敲《たゝ》くと、ぐら/\として開《あ》きさうであつた。力《ちから》を籠《こめ》て、向《むか》うへ押《お》して見《み》たが效《かう》がないので、手許《てもと》へ引《ひ》くと、颯《さつ》と開《ひら》いた。
目《め》を塞《ふさ》いで飛込《とびこ》まうとしたけれども、あかるかつたから驚《おど》いて退《さが》つた。
唯《と》見《み》ると、床《とこ》の間《ま》も何《なん》にもない。心持《こゝろもち》十疊《じふでふ》ばかりもあらうと思《おも》はれる一室《ひとま》にぐるりと輪《わ》になつて、凡《およ》そ二十人餘《にじふにんあまり》女《をんな》が居《ゐ》た。私《わたし》は目《め》まひがした故《せゐ》か一人《ひとり》も顏《かほ》は見《み》なかつた。又《また》顏《かほ》のある者《もの》と
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