あたま》が重《おも》かつた、顏《かほ》を上《あ》げるが物憂《ものう》かつた。
繰返《くりかへ》して三度《さんど》、また跫音《あしおと》がしたが、其時《そのとき》は枕《まくら》が上《あが》らなかつた。室内《しつない》の空氣《くうき》は唯《たゞ》彌《いや》が上《うへ》に蔽重《おほひかさな》つて、おのづと重量《ぢうりやう》が出來《でき》て壓《おさ》へつけるやうな!
鼻《はな》も口《くち》も切《せつな》さに堪《た》へられず、手《て》をもがいて空《くう》を拂《はら》ひながら呼吸《いき》も絶《た》え/″\に身《み》を起《おこ》した、足《あし》が立《た》つと、思《おも》はずよろめいて向《むか》うの襖《ふすま》へぶつかつたのである。
其《その》まゝ押開《おしあ》けると、襖《ふすま》は開《あ》いたが何《なん》となくたてつけに粘氣《ねばりけ》があるやうに思《おも》つた。此處《こゝ》では風《かぜ》が涼《すゞ》しからうと、其《それ》を頼《たのみ》に恁《か》うして次《つぎ》の室《ま》へ出《で》たのだが矢張《やつぱり》蒸暑《むしあつ》い、押覆《おつかぶ》さつたやうで呼吸苦《いきぐる》しい。
最《も》う一《
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