何《いか》なる事《こと》ぞと、奪《うば》つて是《これ》を見《み》れば、其《そ》の品《しな》有平糖《あるへいたう》の缺《かけら》の如《ごと》くにして、あらず、美《うつく》しき桃《もゝ》の花片《はなびら》なり。掌《たなそこ》を落《おと》せば、ハラハラと膝《ひざ》に散《ち》る。時《とき》や冬《ふゆ》、小春日《こはるび》の返《かへ》り咲《ざき》にも怪《あや》し何處《いづこ》にか取《と》り得《え》たる。昌黎《しやうれい》屹《きつ》と其《そ》の面《おもて》を睨《にら》まへてあり。韓湘《かんしやう》拜謝《はいしや》して曰《いは》く、小姪《せうてつ》此《こ》の藝當《げいたう》ござ候《さふらふ》。因《よ》りて書《しよ》を讀《よ》まず又《また》學《まな》ばざるにて候《さふらふ》。昌黎《しやうれい》信《まこと》とせず、審《つまびらか》に其《そ》の仔細《しさい》を詰《なじ》れば、韓湘《かんしやう》高《たか》らかに歌《うた》つて曰《いは》く、青山雲水《せいざんうんすゐ》の窟《くつ》、此《こ》の地《ち》是《こ》れ我《わ》が家《いへ》。子夜《しや》瓊液《けいえき》を※[#「歹+食」、第4水準2−92−50]《そん》
前へ
次へ
全10ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング