》の僧院《そうゐん》を假《か》りて獨《ひと》り心靜《こゝろしづ》かに書《しよ》を讀《よ》ましむるに、日《ひ》を經《ふ》ること纔《わづか》に旬《じゆん》なるに、和尚《をしやう》のために其《そ》の狂暴《きやうばう》を訴《うつた》へらる。仍《よつ》て速《すみやか》に館《やかた》に召返《めしかへ》し、座《ざ》に引《ひ》いて、昌黎《しやうれい》面《おもて》を正《たゞし》うして云《い》ふ。汝《なんぢ》見《み》ずや、市肆《しし》の賤類《せんるゐ》、朝暮《てうぼ》の營《いとな》みに齷齪《あくさく》たるもの、尚《な》ほ一事《いちじ》の長《ちやう》ずるあり、汝《なんぢ》學《まな》ばずして何《なに》をかなすと、叔公《をぢさん》大目玉《おほめだま》を食《くら》はす。韓湘《かんしやう》唯々《ゐゝ》と畏《かしこま》りて、爪《つめ》を噛《か》むが如《ごと》くにして、ぽつ/\と何《なに》か撮《つま》んで食《く》ふ。其《そ》の状《さま》我《わ》が國《くに》に豌豆豆《ゑんどうまめ》を噛《かじ》るに似《に》たり。昌黎《しやうれい》色《いろ》を勵《はげ》まして叱《しか》つて曰《いは》く、此《かく》の如《ごと》きは、そも/\如
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