間拍子の分らない、まんざらの素人は、盲目聾《めくらつんぼ》で気にはしないが、ちと商売人の端くれで、いささか心得のある対手《あいて》だと、トンと一つ打たれただけで、もう声が引掛《ひっかか》って、節が不状《ぶざま》に蹴躓《けつまず》く。三味線の間《あい》も同一《おんなじ》だ。どうです、意気なお方に釣合わぬ……ン、と一ツ刎《は》ねないと、野暮な矢の字が、とうふにかすがい、糠《ぬか》に釘でぐしゃりとならあね。
さすがに心得のある奴だけ、商売人にぴたりと一ツ、拍子で声を押伏《おっぷ》せられると、張った調子が直ぐにたるんだ。思えば余計な若気の過失《あやまち》、こっちは畜生の浅猿《あさま》しさだが、対手《あいて》は素人の悲しさだ。
あわれや宗山。見る内に、額にたらたらと衝《つ》と汗を流し、死声《しにごえ》を振絞ると、頤《あご》から胸へ膏《あぶら》を絞った……あのその大きな唇が海鼠《なまこ》を干したように乾いて来て、舌が硬《こわ》って呼吸《いき》が発奮《はず》む。わなわなと震える手で、畳を掴《つか》むように、うたいながら猪口《ちょこ》を拾おうとする処、ものの本をまだ一枚とうたわぬ前《さき》、ピシリ
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