歌行燈
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)宮重《みやしげ》大根
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)酒|汲《く》みかわして、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、
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一
宮重《みやしげ》大根のふとしく立てし宮柱は、ふろふきの熱田の神のみそなわす、七里のわたし浪《なみ》ゆたかにして、来往の渡船難なく桑名につきたる悦《よろこ》びのあまり……
と口誦《くちずさ》むように独言《ひとりごと》の、膝栗毛《ひざくりげ》五編の上の読初め、霜月十日あまりの初夜。中空《なかぞら》は冴切《さえき》って、星が水垢離《みずごり》取りそうな月明《つきあかり》に、踏切の桟橋を渡る影高く、灯《ともしび》ちらちらと目の下に、遠近《おちこち》の樹立《こだち》の骨ばかりなのを視《なが》めながら、桑名の停車場《ステエション》へ下りた旅客がある。
月の影には相応《ふさわ》しい、真黒《まっく
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