二十一

 さて、饂飩屋《うどんや》では門附の兄哥《あにい》が語り次ぐ。
「いや、それから、いろいろ勿体つける所作があって、やがて大坊主が謡出《うたいだ》した。
 聞くと、どうして、思ったより出来ている、按摩|鍼《はり》の芸ではない。……戸外《おもて》をどッどと吹く風の中へ、この声を打撒《ぶちま》けたら、あのピイピイ笛ぐらいに纏《まと》まろうというもんです。成程、随分|夥間《なかま》には、此奴《こいつ》に(的等。)扱いにされようというのが少くない。
 が、私に取っちゃ小敵《しょうてき》だった。けれども芸は大事です、侮《あなど》るまい、と気を緊《し》めて、そこで、膝を。」
 と坐直《すわりなお》ると、肩の按摩が上へ浮いて、門附の衣紋《えもん》が緊《しま》る。
「……この膝を丁《ちょう》と叩いて、黙って二ツ三ツ拍子を取ると、この拍子が尋常《ただ》んじゃない。……親なり師匠の叔父きの膝に、小児《こども》の時から、抱かれて習った相伝だ。対手《あいて》の節の隙間を切って、伸縮《のびちぢ》みを緊《し》めつ、緩めつ、声の重味を刎上《はねあ》げて、咽喉《のど》の呼吸を突崩す。寸法を知らず、
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