ああ、今の御主人が、親切なだけなお辛い。……何の、身体《からだ》の切ない、苦しいだけは、生命《いのち》が絶えればそれで済む。いっそまた鳥羽へ行って、あの巌《いわ》に掴《つか》まって、(こいし、こいし、)と泣こうか知らぬ、膚の紐になわつけて、海へ入れられるが気安いような、と島も海も目に見えて、ふらふらと月の中を、千鳥が、冥土《めいど》の使いに来て、連れて行かれそうに思いました。……格子|前《さき》へ流しが来ました。
 新町の月影に、露の垂りそうな、あの、ちらちら光る撥音《ばちおと》で、
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……博多帯しめ、筑前絞り――
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 と、何とも言えぬ好《い》い声で。
(へい、不調法、お喧《やかま》しゅう、)って、そのまま行《ゆ》きそうにしたのです。
(ああ、身震《みぶるい》がするほど上手《うま》い、あやかるように拝んで来な、それ、お賽銭《さいせん》をあげる気で。)
 と滝縞《たきじま》お召《めし》の半纏《はんてん》着て、灰に袖のつくほどに、しんみり聞いてやった姉さんが、長火鉢の抽斗《ひきだし》からお宝を出して、キイと、あの繻子《しゅす》が鳴る、帯へ挿《は
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