さ》んだ懐紙に捻《ひね》って、私に持たせなすったのを、盆に乗せて、戸を開けると、もう一二|間《けん》行きなさいます。二人の間にある月をな、影で繋《つな》いで、ちゃっと行って、
(是喃《こいし》。)と呼んで、出した盆を、振向いてお取りでした。私や、思わずその手に縋《すが》って、涙がひとりでに出ましたえ。男で居ながら、こんなにも上手な方があるものを、切《せ》めてその指一本でも、私の身体《からだ》についたらばと、つい、おろおろと泣いたのです。
 頬被《ほおかむり》をしていなすった。あのその、私の手を取ったまま――黙って、少し脇の方へ退《の》いた処で、(何を泣く、)って優しい声で、その門附が聞いてくれます。もう恥も何も忘れてな、その、あの、どうしても三味線の覚えられぬ事を話しました。」

       二十

「よく聞いて、しばらく熟《じっ》と顔を見ていなさいました。
(芸事の出来るように、神へ願懸《がんがけ》をすると云って、夜の明けぬ内、外へ出ろ。鼓ヶ嶽の裾にある、雑樹林の中へ来い。三日とも思うけれど、主人には、七日と頼んで。すぐ、今夜の明方から。……分ったか。若い女の途中が危《あぶな》い、
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